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ストーリーVol.4 牧野加奈子

牧野加奈子

ヨギー・ヨギーニのための四季の和食講座レシピ提供

牧野加奈子

食べるということは、物語を読むことのように感じます。

一皿に盛られた料理が手のひらの中に辿りつくまでには、たくさんの人のたくさんの物語が関わっていて。
食べることでそれらが一つに溶け合い奏でられるメロディーは、遥か昔の記憶まで運んできてくれる。そのことを改めて教えてくれたのは、イタリアの海と太陽に見守られ、一杯のあるリキュールを飲んだときでした。

日本でも何度も飲んだことがある、甘くて苦いそのお酒が教えてくれたのは心と、からだと、そして大きな物語とが、つながる喜び。

この地でどうしてこんな飲み物が生まれ、人々に愛され、私の目の前まで辿りついたのか。
そのとき、それらが五感を通じてすうっと、私にしみこんでいく心地よさを感じました。

昔から、食べることが好き。美味しいものを作って食べたい。そんな気持ちから、料理も好きになっていったように思います。
海外の文化にも興味があり、たくさんの国を訪れました。
海外を訪れるときは決まって、地元の人が集まる食堂で、地元の人と同じ料理を食べます。

どんな環境でどんな食材をどんな風に食べるのか知りたい。料理だけでなく、飲食店の経営がしたいと思うのは、食というものを取り囲む全てに魅了されているからなのでしょう。
どこで誰とどんな気持ちでいるのかによってカタチを変える食は、全てが一期一会です。

大学卒業後は、日本料理店で働きました。

いわゆる、板前の世界。今となれば学びの多い貴重な時間でしたがその頃の甘っちょろい私には厳しすぎる修行で、挫折。
けれども、その中で出会った野菜を拵える作業に魅せられ、もっともっと野菜の料理を極めたい、との思いが強くなりました。

野菜は料理人として、難しくも楽しい食材です。
肉や魚に比べ旨味を引き出すのに時間がかかるし、手間もかかる。
一般的においしいと一口でわかってもらうのには、肉や魚のほうが簡単です。

けれども、その分様々な形に変化もつけられるし、食感も自由自在、色合いも、味も変化に富んでいます。

板前修業の後、世界でも有数の農業国でもあり、最も食いしん坊の多い(?)フランスに渡りました。
そこでの生活は、私の人生の中でも宝物のようなきらきらとした時間。

カフェや、和食のお店、ときには普通の家庭に日本食を作りに行くアルバイトをして日銭をかせぎ、市場で珍しい野菜を買ってきては自分で調理して試してみたり人の作ったおいしいものを多いに食べたりしてすごしました。

そんな1年がすぎ、やっとのこと見つけたちゃんとお金を出して雇ってくれるレストラン。このまま日本に帰らなくてもいいと思った矢先。自分が重い病を抱えている事がわかりました。

食材にも気を使い、食事には人一倍関心を高く持ってきたのに、どうしてだろう。
そんな疑問の先にいたのは、一人の日本人としての自分自身でした。

日本人として生まれ育った私には、日本の食材、日本の料理の方が馴染んでいたのかもしれない。いくら“からだにいい”食材であっても、心とからだにリンクしなかったのかもしれないと。

フランスでの生活からは一転、1年近く入退院を繰り返しながら、日本で治療に専念。

回復した後は、もう一度、あきらめていた和食を学びなおしたいと、再び懐石料理のお店で修行を始めました。
負けず嫌いな性格のお陰でついつい根を詰めてしまうこともありましたが、自分のからだの声によく耳を傾け、丁寧に歩いていくよう心がけました。その後何年かして独立し開いた現在のお店。

常連のお客さんの一人だったヨガセラピスト協会の宮原暁子さんから、協会で私のレシピの和食講座を開きたいと依頼されたとき、正直戸惑いました。
なぜならヨガと、和のものである私のレシピがどうつながるのか、わからなかったからです。

しかし、暁子さんのお話を聞くにつれ、ヨガの世界と私が食を通じて表現しようとしている世界とに重なりがあることがわかっていきました。
ヨガと起源を一つにするアーユルヴェーダには、「その土地で獲れた旬のものを味わう」という考え方があり、だからこそ日本に住む日本人の自分たちには先ず和食、という暁子さん。
フランスでの生活の後、和食に立ち返ったことを思い出しました。

また、「エネルギーを認知摂取するために五感が作られた」と捉えているため、正しい量と質の摂取によって、五感を十分に満たすことが重要ということ。
味においても、6味、つまり甘味、塩味、酸味、苦味、辛味、渋味のすべてを感じることで、こころと身体を満足させるという考え方があるとのこと。
五味・五色・五法というようにあらゆるアプローチからすべての感覚を楽しませる和食、根本的なところで一致するものを感じました。

現在、私の店では24節気の移り変わりにあわせて定食をお出ししているのですが、ひと季節の前に、節季ごとの定食の計画を立てるものの、実際にそのシーズンになり、思ったより今年は暑いとか、雨が多いとかによって、当初の計画にこだわらずどんどん変更していっています。

土地のつながり、同じ空の下で同じ風に吹かれているからこそ共有できる、その時々の感覚。
地元のものを、旬のものを使って、今まさにからだが求めるものを食べたいし、食べてもらいたい。
私が食に込めてきた思いが宮原さんに伝わっているようで、嬉しくもありました。

和食講座のレシピで大切にしているのは、1年間を通じて一通りの調理法をマスターできるようなレシピとすることです。
限られた講座の中でなるべくたくさんのものを持って帰ってもらえたらな、と考えさまざまな要素をいれるようにしています。

レシピがヨギーニのみなさんそれぞれの感性を通じて料理となり、食卓を囲む多くの笑顔と出会う。
食材を感じ、つながり、広がっていく感覚の手助けになれればと願っています。

全ての食は、私たちのからだの一部となり、からだはたくさんの物語とつながっていくのだと思います。
イタリアの海と太陽がくれたあの思いが、消えることのないように。

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