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ストーリーVol.8 戸谷 舞

キッチンに立つとき、少し背筋が伸びる。
エプロンは使い慣れたものだけど、洗いたてが気持ちいい。
包丁はしっかりとにぎって、肩肘を張り過ぎないように。
もしかしたら途中で、甘えたがりの息子がぐずりだすかもしれない。
そんなときは落ち着いて「ママはここにいるから大丈夫」とぎゅっと抱きしめる。
おてんば盛りの娘が、不意に走り寄ってくるかもしれない。
いつの日かこの子たちに料理を教えるときがくるのかもしれないと思うと、いつも以上に愛おしく感じる。
掛け時計の針のように、チクタクと過ぎゆく日常。
そこに優しく瑞々しい彩りを添えてくれるのは、四季を感じる手作りの和食です。

人と接するのが好きで、好奇心旺盛。
どちらかというと、一つのことを極めるというよりは、いろんなことに挑戦してみたい。
そんな私が“ひとのからだ”に興味を持ったのは、学生時代に経験した部活のマネージャーがきっかけでした。
チームの勝ち負けというよりは、プレーヤー一人ひとりがベストコンディションで活躍できるようサポートすること。
おおげさに言えば、それが部活における私の任務だと思っていた。
その結果として、みんなと喜びを分かち合えることがなによりも嬉しい。
テーピングの仕方やストレッチの方法から始まり、人体の仕組みである解剖学へ。
やりたいこと・興味のあることとなると、どんどんのめりこんでいってしまうところが私にはあります。

進学した柔道整復師の専門学校は本当に楽しくて、あっという間に時が過ぎました。
骨の数や付いている筋肉の種類・臓器の位置やはたらきなど、人体の基本的な構造はみんな同じということを学びました。
基本は同じなのに、身体に関する悩みは十人十色。
それは、ひとりひとり生活習慣が違って、身体の使い方や考え方が違うからこそなんです。
個性の一部が身体の悩みとなって表出していると考えると、自分では欠点だと思っているところも愛おしくなる。
そうした悩みに対するアプローチの仕方も、本当にたくさんあります。
実習やバイトを通じて様々なアプローチ方法を学ぶなかで、ヨガにも触れるようになっていきました。

ヨガセラピスト協会の前身となるヨガサロンに通い始めたのは、学生時代。
いくつか資料請求したなかで、なによりも人の温かみを感じたのが大きな決め手でした。
心と身体を丁寧にほぐし、無意識のうちに抑え込んでしまっていた自分を解き放ち、より自由になっていくような。
これまで味わったことのない感覚。
それはとても、優しくて温かい。
心と身体が軽くなる心地よさが、そこにはありました。

実は、当初はヨガに対してなんとなく難しいイメージをもっていました。
ですが実際に体験してみると、学んできた解剖学の知識とリンクする部分がとても多いことを知りました。
ヨガにも基礎となる考え方があり、難しいポーズができない場合は、軽減ポーズがある。
どんな人にも合わせられるアプローチの仕方があり、適切なアプローチを経ることで、どなたでもヨガを通じて心地よさを感じることができます。

ヨガセラピストとしてヨガを教える側になった今も、心と身体が軽くなる心地よさを一番大切にしています。
ヨガを極めるというよりも、この心地よさを誰かと共有したいというのが私の一番のモチベーション。
難しいヨガのポーズに挑戦したり、哲学的な瞑想の世界に没入したりすることに、どちらかと言うとこだわりはありません。
もちろん、美しいポージングや深い瞑想も大切だと考えていますが、まずは感じることを大切にしたいから。
時間や言葉を超えて伝わるものが、そこにはある。

ヨガセラピストと同時に和食講座の活動を始めたのは、娘が2歳になるころでした。
それまで料理にはあまり興味も自信もなく、少し避けてきた部分もありました。
自分の空腹を満たすためだけのものから、家族の健康を支え、身体そのものを作るものへと意味合いが変わり、本格的に料理を学んでみたいと思い始めたタイミング。
ヨガセラピスト協会で和食講座がスタートしたのをきっかけに、和食に挑戦することにしたのです。

和食講座では驚きの連続でした。
手に取ったことのなかった、旬の食材の数々。
そのときどきの食材を生かすためにある、たくさんの調理方法。
目にも鮮やかな盛り付け。
和食というと勝手に煮物ばかりの地味なイメージを抱いていましたが、講座で習うレシピは実に多彩。
そして何よりも驚きだったのは、その美味しさ。
「わざわざ料理教室に通わなくても、、、」なんて言っていた夫も、和食講座で作った料理を披露すると「次の講座はいつなの?」と目を輝かせて訊ねてくるように。

ヨガセラピスト協会の和食講座でお教えしているレシピには、二十四節気の移ろいに合わせて“ハレ”と“ケ”のバリエーションがあります。
ハレとはお客様をおもてなししたり、特別なお祝いをしたりする華やかな場面。
ケとは、私たちにとって欠くことのできない日常。
基本を押さえれば、少しの工夫でそれぞれにふさわしい食卓を作ることができるように。
どこか、ヨガに通じるものがあるように感じます。

まだ幼い二人の子供を抱えているから、私にとって無理なく続けられることはとても重要。
今はヨガ教室も和食講座も、自宅で少しずつ開催しています。
不思議なことに、私がヨガをやっていると子供たちはいつも以上に嬉しそう。
身体を使うことや食べることを通じて、この気持ちを、この愛情を大切な人に伝えることができる。
それはどなたにとっても、とても素晴らしいことになると感じています。